十七回忌

友人の十七回忌に行ってきた。

彼は中学からの同級生で、数少ない親友と呼べる友人であった。
僕が大学に入って少しして突然事故で亡くなってしまい、それはもう衝撃を受けた。

ちょうど直前に大阪で映画を観に行ったのを覚えている。
彼はなぜか漫画のNANAに影響を受けて、ブラックストーンという甘ったるいタバコを吸っていた。今思えばかっこ悪いが、まあ20歳そこそこなので年相応かもしれない。

僕は本当に記憶力がなく、物事を忘れないようにこの日記を書くようにしているのだが、
それでも彼の事は割とよく覚えていた。

成績が良くスポーツも得意で、芸術への造詣も深かった。
東大に行くか芸大に行くか迷っており、結局現役で東大に行った。
そしてそんな経歴からは想像できないような、明るく謙虚で、緩い性格の人間だった。

事故の後、ご両親の呼びかけで友人達が集まり、彼の追悼集が作られた。
何年もかけて製作され、何百ページもある大作になった。
そこには彼の人生の記録や、大勢の友人達のメッセージが書き連ねられている。

僕も声を掛けて頂き、少しだけ追悼のメッセージを載せてもらったが、
どうも積極的に編集の会に参加する気にはならなかった。
彼のたくさんの友人達と僕はあまり親しくなかったし、それに何より当時の僕は
皆で思い出を共有しよう、という姿勢に疑問を感じていた。
別に自分の中で彼の事を覚え続けていればそれでいいと思っていた。

追悼集は少ししか読まず、何度か引っ越している内に失くしてしまった。
そんな時に十七回忌のお知らせがあり、少し迷ったが参列させて頂いた。
彼の自宅で法要は行われた。主に大学の友人達が集まり、ちょっとした同窓会のようになっていた。
食事会もそこそこにお暇させてもらったが、そこで例の追悼集を頂いた。
(たくさん刷ってしまったので結構余っていたらしい)

今なら抵抗なく読めると思い、帰宅してからじっくり読み進めてみた。
そこには彼の幼少の頃から大学生に至るまでのたくさんのエピソードや写真が、本当に細かなところまで、見事にまとめ上げられていた。
中学生の彼のページには、学校の帰り道に梅田で僕とよくラーメンを食べて帰ったと書かれていた。

忘れてた。梅田の阪神百貨店の地下のフードコートの様な所で、僕は彼とよくラーメンを食べていたのだ。すごく大事な事を忘れてしまっていた。

大学生の時、友人達からもっと彼の話を聞いておけばよかったかもしれない。
そうしたらもっと違った飲み込み方ができたかもしれない。
そんな事を考えながら、追悼集を読み終えた。

 

僕の家には彼が描いた縄文杉の油絵が置かれている。
彼が中学生の頃の作品で、重厚でずっしりとした大樹が力強く描かれている。
良い絵だと言ったらくれた。彼にとっては大事な作品じゃなかったんだろうか。
今見ても良い絵だと思う。